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2011年2月25日 (金)

マイ・ベスト・ミステリーVI  日本推理作家協会

この本では6人の作家の自薦短編と、その作家がお薦めする他の作家の短編が収録されています。
これは中々オモシロい企画だと思います。
自分のは別としてお薦め作家の作品は、かなりの高確率でスベらないでしょ。

◆「望月周平の秘かな旅」 有栖川有栖

有栖川有栖に関しては前にも書いた通りに、昔は結構読んでいた作家なので勝手知ったる感じです。
今回の話もこないだ読んだ江神二郎が出てくるシリーズの1つだったのでスッと話に入っていけました。

相変わらずのミステリオタクで、こちら素人とすれば口惜しい場面もあります。
どういう所だったかと言うと「推理小説研究会」の面々が、"私は実はまだあれを読んでいません"をやっている所。
こんなんやりたいね〜、自分の得意分野で。
めっちゃ楽しそうやん。
フットボールとか音楽とか。
ミステリに関してはド素人なんで「樽」を読んでないとか「グリーン家殺人事件」を読んでいないとか言われても全然ピンとこないのよね。
羨ましさだけが募りました。

さて今回の話は、そんな推理小説研究会のメンバーの1人である望月周平による哀愁漂う旅の模様が描かれております。
コッソリと相手を喜ばす、こういう悪戯というか仕掛けは確かに楽しいし、愛があります。

◇お召し 小松左京

この話、滅茶苦茶オモシロかったですね〜。
有栖川有栖も書いてましたが、これを多感な学生時代に読んでいたらエラい事になっていたでしょう。
大人になって読んでみてもオモシロいんですから。

どんなハナシだったかというと、13歳以上の年齢になると突然姿が消えるという世界を描いた作品です。
残された子供達は突然消えた大人達に戸惑いながらも必死に生きていきます。
しかしながら、そんな子供達も13歳の誕生日を迎えると突然消える。
そうまるで養魚池の様に・・・。

いや〜設定が堪らんかったねぇ。
もし中学生ぐらいの親戚がいたとして「お薦めの本は?」なんて聞かれたら真っ先にこれを薦めるレベルです。

◆わが生涯最大の事件 折原一

これは全然オモシロくなかったね〜。
ある田舎での時効になった連続殺人事件の後の顛末を描いてるわけなんですが、もう展開がミエミエなんですよ。
しかもディテールも甘くて全然つまらない。
短編だとどうしても登場人物が少なくなるので、それだけ犯人候補も少なくなるのは当然なんですが、それにしてもなぁ・・・。


◇原島弁護士の処置 小杉健治

これは中々の秀作だと思います。
日本における裁判の問題点(加害者の人権ばかりが守られて被害者は益々被害者に・・・等)を的確に洗い出してるし、尚かつ登場人物のキャラも立っている。
犯人の異常性や家族を殺された父親や、犯人に恨みがある筈の弁護士やら。
読み応え充分で素晴らしかったよ。


◆最上階のアリス 加納納子

プロバビリティーな犯罪を題材にした佳作。
なんかこのハナシ読んだ事あるような無いような・・・。
昔読んだかな〜、似たような話が何かであったのかなぁ。
愛情を持って夫を殺したい妻の話なんですが、なかなかホロっときますよコレは。


◇DL2号機事件 泡坂妻夫

こういう類の話は幾つでも読みたい、そう思わせる作品でした。
つまり何かコチラの考え方に訴えかけてくる種のモノです。
この話の底っていうか基になってるのが「同じ事は2度と起こらない」っていう考え方です。
サイコロで1の目が出たら次にふったら1の目以外が出るんじゃないか、一度墜落した飛行機会社の飛行機はしばらく墜落しないんじゃないか、今回大きな地震が起こったのでしばらくは起きないんじゃないか、ってな具合にね。
あーあるある、そんな考え方、って思いました。
しかも自覚なく考えてる場合もあった事に気付かされました。
冷静に考えればサイコロは単なる確率でしかないけど、地震は一度起こった土地はむしろ起こりやすい側面もあるし、一概には言えませんけどね。
飛行機なんかは人為的なミスからの墜落だったとすれば、注意を払う事によってしばらくは事故が起きないという理論は成立しますが。
と、まぁこういう事を考えるのは楽しいよね。
そしてこんな事をベースに殺人事件の話を書けてしまう筆者は凄いと思いましたよ。


◆ジャケット背広スーツ 都筑道夫

タイトルは直接は関係無いですよね。
今回のストーリーであるメインの殺人事件からすれば、「上衣を2着手に持っていた男」ってのは結局は事件に関係あるわけでもなく只の容疑者の証言でしかないわけですから。
しかしストーリーに深みを与えるという意味ではオモシロいし、著者が実際にあったそういう光景から物語りの着想を得たというのも興味深い。
こちらの想像の外に出る、という行為が小説の愉しみでもあるしね。


◇押絵と旅する男 江戸川乱歩

乱歩さんの作品はもう幾つも読んでいるので、今回の目的である「新たにオモシロそうな作者」を見つけるという趣旨からは外れております。
ですが読み飛ばすなんて失礼な事は出来ず、読みましたよ。
そしていつも通りの読ませるチカラで最後までスラスラと読んでしまいました。
今回も人間が押絵になってしまうなんていう奇想天外な話でしたけど、不思議と荒唐無稽感が無いのよね〜。
そのへんは貫禄でしょうか。


◆ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか? 法月綸太郎

ちょっと策を弄し過ぎたかな〜、という印象。
誰誰と誰誰が実は血が繋がっていて〜、というのが多すぎ!!
どんだけ繋がってんねん、と。
同じネタそんなにやっちゃう、って思いましたよ。
それが無かったら普通にオモシロい作品だったと思うのですがね。
あとオチが突然SFチックになるのは賛否両論ありそうですが、個人的にはGOOD。
読者の想定を裏切ってこそ、小説でしょ。

◇黒い扇の踊り子 都筑道夫

1つ前では選ぶ側だった都筑さんが選ばれる側になって登場です。
こういうのは微笑ましいのですが、本としてはどうなん?って思ってしまいます。
ってのもこのシリーズも今回で6冊目、勿論被ってくる作者も出てくるでしょう。
それは致し方ないと思いますが、それを1冊に収録してしまうのは芸がないように感じられます。
どうせシリーズものなんですから次の「7」に入れたら良いんじゃないか、と。
この類の本って色んな作家が読みたい、って動機で手に取る人が大多数だと思うんでね。

さて本筋から話が外れましたが、別に都筑さん自体は悪くないんですよ。
誤解があってはなんなんですが。
今回も密室トリックを人情絡めて暴いており、中々お上手です。


◆神楽太夫 横溝正史

横溝作品は「金田一」シリーズで読み漁ったので、乱歩さん同様に今回の趣旨にはそぐわないんですが、読まないわけにはいきません。
そして相変わらず楽しいしね。

今回はえらく自虐的な話でしたなぁ。
推理小説作家達の鼻っ柱を折るというか、なんというか。
探偵小説家が得意気に事件の話を聞いていたが、実はトリックでもなんでもなかった、みたいなね。
田舎の風習を絡めたり、と横溝色もバッチリだし、やっぱりレベル高い。


◇秘密 谷崎潤一郎

人間の記憶なんて大した事ないもんです。
「なんか読んだ事ある気がするな〜」って感じで読み進めていたのですが確信は得られず。
最後のオチで、ようやく思い出しました。
やっぱり読んだ事ありましたよ、コレ。
いや〜面目ないです。
改めて素晴らしい作品、なんて書いても説得力もへったくれも無いな・・・。
秘密である事に魅力がある、人間のサガなんてそんなもんですよね。

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